差別解除するのになんで二者択一?

昨日の続き。
http://d.hatena.ne.jp/nodada/20070404/p1

こちらのエントリでコメントを頂いたのだけれど、エントリ内でトラバさせてもらったintegralさんの元記事と併せて考えてみたい。
なんだか、単純にお考えになられてるみたいだけれど、差別解除と他者との共存はそんな二者択一の話じゃないと思う。寛容を求める理由や、非寛容、恐怖心などの意識が形式的差別に繋がることへの批判内容を、どうもご理解いただけなかったみたい。(←文章力ないからね。)なんだか食い違いがあるので、前回とは別の議論の方向性で語らせていただきます。
まず、トラバ先から再引用。

その意味ではレズ・ホモの人たちがデモなどで大々的に活動するのも、PoliticalActとして政治的・法律的不利益の是正を求める目的ならばいいと思いますが、世間の人に受け入れてくれ、っていうのは大きなお世話だ、と思いますよ。

*1
さらにコメントから引用。

寛容がなければ問題提起すら、というのは確かにそうかもしれませんが、私は問題提起をすること自体に疑問を持っています。

*2

差異を認めるというのは私の場合は孤であることを受け入れることだと思っていますので、そういう意味では寛容とは逆方向の排除こそが差異を受け入れることになるのじゃないのかなぁ、と思ってます。寛容というのは必然的に自分のフィールドとの共有点を必要としますから、それが善意の人ならともかく、悪意の人だとゆがんだ運用をされるおそれがある。なら、排除を基礎とした理解もあって良いのではないかなぁ、と思います。要するに「大きな御世話」と言うヤツです。

*3

ただ、画一的な扱いを以て本質とする法律的な扱いに於いて差別がある場合はこれは是正されなくてはなりません(ex.例えば少数派はたたきのめしてもいい、などというのは絶対に認められません)が、それはあくまで法的な問題であって、社会的に認容・寛容されるかどうかと直接はつながらないと思うわけです(ただし、この考え方は司法救済を前提としますから、立法によって事前に救済を行おうとするのならば話は変わりますが)。

*4

こうすると、結局隔離何じゃないのか、と言われそうですが、それはそれで仕方ないのではないでしょうか。

*5
では、これらの文章を頭に入れておいて欲しい。


差別と云うものは、差別を維持し強化しようとする構造があって初めて生まれるもののはず。そしてその差別を支え維持し強化するのは、差別者の恐怖心だけでもなく制度自体だけでもないはず。そのどちらもが手を取り合いお互いを支えあうものだからこそ、そこに差別が温存されるんだと思う。
恐怖心(以下フォビア)からくる差別的態度と目に見えるほどわかりやすい制度的差別は、まったく結託していなかったろうか?もしそのようにお考えなら、私は納得できない。みやきちさんが

同性愛者の隔離は一見「不快感」や「恐怖心」に基く「隔離」であるように思えるが、実際はそうではない。もし「不快感」や「恐怖心」それ自体が隔離の根拠ならば、それは「同性愛者」を排除する論理を必要としないだろう。それらが必要とされるのは実は逆であって、「不快感」や「恐怖心」を判断させる変数に同性愛者というカテゴリーが使用されているのである。すなわち、「不快感」や「恐怖心」等の測定は実のところ非常に困難であり明示的でないのに対し、「ゲイ」や「レズビアン」は明示化させられているので、それを「不快感」や「恐怖心」の指標とする方が簡単なのである。

http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20070405

結局のところ、同性愛者が排除・隔離される本当の理由は、ただ単に彼または彼女が同性愛者であるという、ただそれだけなのである。不快感がどうこうという理由づけは、その排除を正当化するために持ち出された偽りの<根拠>にすぎない。

http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20070405

と、パロディ文章をお書きになられてる通り、LGBTが差別されるのは、確かに制度的なもの以外の要素もあるのよね。フォビアが差別を正当化することもある。


米国などでも同性愛者らが結婚できる権利を獲得しようとする際、そこにはかならず原理主義的宗教観が邪魔をするものだけれど。

integralさんはどうも差別に対して単純に考え過ぎではないだろか。制度の差別だって私たちが住む世間でのまなざしがあって維持されてるはずでしょ?もし仮に「制度を変えるべきだ!」とだけ主張していればその制度の差別を解除できると思っているのなら楽観的過ぎ。実際権利獲得する際抵抗となるのはフォビアだもの。そう、事実フォビアが制度の差別を支えてるのよ。制度が制度だけで維持されてるのではなく差別者のフォビアが制度の存在と同時に結託して制度を維持し、差別を生んでる*6。制度だけが問題であるのなら、とっくの昔に差別なんて解決してるわよね。差別を維持する誰かがいて、制度を正当化する論理がはびこるから差別が存在し続ける。当たり前のことだと思うからこれは理解してもらえると思う。


では、そのような場合LBGTはどのような戦略に出るのか。
たとえば同性婚を成立させるとき、社会全体で協議する必要があるので、世論を味方につけないと話にならない。社会全体に同性愛者に寛容な態度がなければ、宗教的理由などとあいまって、同性婚の成立は支持されないだろう。では、世論を味方につけるためにフォビアを解除しようとするのは当然の戦略でしょ。


パレードなどでフォビアをやめて〜けんかをやめて〜ふたりをとめて〜と謳うのは、そうした差別を正当化する向きと対抗するためでもあるんじゃない?*7
だとしたら、そこには差別解除のための「寛容」がキーになる事だってあるでしょ。
それだのに、寛容を求めることすら必要とせず、制度の解除を求めるだけで十分だ、と言い切るのは、戦略がなさ過ぎて差別解除を目的にしてるにしてはあまりに杜撰。
差別解除については、別に寛容か排除かの二者択一に任されるのではなく、構造を解除するあらゆる複合的な戦略が必要なわけで、その方法は一つには纏まらない。
そこに、パレードなどで寛容を求める戦略だってあっていいはずじゃない。どんな目的でも、別に公共の福祉に反しない限りはどんな戦略とったって別に構わないでしょう?確かにintegralさんが言うように、寛容されるかどうかが、差別解除に直接つながるとは限らないけれど。先に申したとおり、常にフォビアの解除と制度の解除は(軌を一にする、とまでは言わないものの)連続性のある事柄だったと思う。
たとえば政治家は、差別ではなく当選を目的とするわけだけども。そのときその政治家は寛容ではなく受けを狙うわけだ。
政治家とLGBT。これを相似形としてみればわかりやすいだろうけど、受けや寛容を求めることで、目的を達成できるのであれば何したってイイじゃない。integralさんが寛容を求めるのを「大きなお世話」だと言うのなら、この政治家にだって同じ理屈として批判しないといけないけど、そうはしないでしょ?別に世間はintegralさんみたいに寛容を求められるのが嫌な人ばかりじゃないし、逆にintegralさんみたいに寛容じゃなくても制度の是正は認めるという人ばかりでもない。
それなら、あらゆる手を尽くして目的を達成した方がよいに決まってる。
そのとき、寛容が(或いは排除が)究極的に行き過ぎれば何か問題が起こるかもしれないけれど、別に誰もそんなこと狙ってるわけじゃなのよ。*8
目的が達成できるだけの状況を作りたいだけだもの。それ以上でも以下でもない。そのために寛容が必要になるのであれば求めたっていいんじゃない?と私は思うけれど。



後、私は全体主義者ではないので「認めろとは言わないけど構うな」という態度は否定しませんが、そういうのはある程度他者と自己が対等でないと正常に機能しません。差別問題はそういう態度の是非を関せず解決されるべきだと私は思うけれど、差別を温存しておいてそういう強者にだけ有利な共存は認めません。LGBTらが差別されてたりする中、「構うな」という態度を社会全体に推し進められたら、侮蔑偏見をされてる層が不利になるに決まっている。少数派なんだからね?具体的な是正をせず、対等な関係も築いてない状況下で無関心を勧めるのは優勝劣敗の中、不利な少数派を貶めるのと同義。というか、差別構造をいかな理由でも温存する向きは社会的に容認しえない。



あー、疲れた。頭痛いのよ今。誰か・・・、私を褒めて。

*1:私はこれから、「だから・・・、法律や制度の是正と世間の寛容との連続性は全くなかった訳じゃないでしょ?」と、主張します。

*2:なぜ?問題提起されなきゃ制度の是正なんて誰もしてくれやしない。

*3:ここではご本人ではないので、integralさんの「孤」や「寛容」の具体的定義はスルーします。申し訳ありません。したがって、文章から客観的に読み取れる範囲内で解釈いたします。

*4:ええ、確かに少数派を叩きのめす法律などは、差別云々ではなく倫理上問題です。しかし少数派に非寛容過ぎる社会はこれを容認します。あと、司法救済のなどのお話は私にはフォローできません。申し訳ありません。

*5:何がどう仕方ないのかわからない。隔離の意味にも拠るけれど、少数派への不当な暴力を容認するには「公共の福祉に反した(犯罪)」などの明確な根拠がなきゃ無理だと思うけれど。

*6:さらに言うと、差別者のフォビアは、制度の差別の存在を根拠に内面化してる場合さえある。常に両者は共犯なのよ。

*7:言っとくけどそれだけじゃないからね。パレードの目的なんて参加する人の数だけあるはずでしょ。一緒に参加してるからって皆が皆、同じ意見を持ってるわけはない。

*8:狙ってる馬鹿がいたら嗤えば済むだけの話。