破綻したやおい論を『俗流やおい論』と呼ぼう。

腐女子でもないのに、なぜかこういうの読むとやんなっちゃう・・・。

http://anond.hatelabo.jp/20071029011649
様々な違和感を払拭しつつまず突っ込ませてもらうと*1、議題の主語がなんなのか不明なんですよ。あのね、このエントリの元ネタである前エントリ*2は「なぜ女子がヤオイ好きか」という議題なのだが*3、そこから「なぜ801がこんなに人気があるのか?」に移行してるのね。でもこの議題って、“誰に”あるいは“どこで”「801がこんなに人気がある」と言いたいのか不明なのね。(まあ、それを言ったら元ネタの「女子」って“どの”「女子」なんだよ、って話なんですが。。。)でもまあ、最後の方を読んでいると、どうやら「女オタク」あるいは「女オタク界」がその主語だと解釈出来そうです。
その他諸々、無茶苦茶な理屈な気がするのですが、とりあえずこの解釈で何かしらを書いてみる。

まず、このエントリでは最初に「古典的な」腐女子論というものを挙げている。その内容は次の二つ。「男女モノは生々しいから敬遠される」「男女ものだと女キャラに嫉妬してしまうから敬遠される」という内容(大意)。とりあえず挙げられたこの二つの仮説に応えてみよう。
「男女モノは生々しく感じるから」という仮説は、「やおいが女オタクの間で人気になる」という結果と論理的に繋がらない。そして更に、「男の相手が女キャラだと嫉妬するから」と「やおいが女オタクの間で人気になる」も繋がらない。「(1)男女ものが生々しいから/(2)男女だと女キャラに嫉妬する」からって、男男ものにいかなければならないという論理的整合性はどこにもないはず。
たとえば、「生々しい」のなら読まなければいいだけの話だし、男の相手が女キャラだと嫉妬するからって(なぜ嫉妬するのかは知らないが)、男の相手が男キャラだと嫉妬しないで済むという論理的保証はどこにもないように思える。つまり、その説明では「やおいが女オタクの間で人気」という現象の原因は何一つ説明できてないことになる。<たとえ、その論理にうなずく当事者がいようともね?*4
ここでわかることはひとつ。「なぜかはわからないが、ある特定の<女>が『男同士の欲望(やおい)』を嗜好している」、という事実のみ。
で、このエントリではこうした仮説を挙げた先にこのように考察を加えている。

が、大抵これらの論は大昔はどうだったのかしらんが今時の腐女子さん的には的外れのよう。
[・・・]
男性のオタクなら、大抵いつかはエロゲーを通るように、女性のオタクなら、オタクになる過程の道中に801の洗礼を受けちゃうからじゃないのかな。女オタク≒801になってしまってる今、ちょっとマンガにはまった子が、ディープになろうとオタク世界に足を踏み入れれば、もうその時点でほとんど801ワールドに足を踏み入れるってことでさ。801じゃない二次創作とか、一応あるけどやっぱ少数派だから。

(なぜ「今時の腐女子」と「昔の腐女子」という風に二分出来るのか全く理解できないのだが、それはそれとして。)

特別801が好きというよりさ、オタクになろうとしたら、もうほとんどがまず801で固められてるから、それを好きになる、という感じなのかなと。そもそも最初に801を流行らせた、昔の人たちの心理は知らないし、もしかしたらその心理が一番上に書いたような感じなのかもしれないけど、少なくとも現代の腐女子ってのはそうでないんじゃないかと。801になにか「少年愛はどうこう」とかいう理由があるわけじゃなくて「そこにあったから」好きになってたみたいな感じなんじゃないか。オタ界を楽しむにはそもそも801しかなかったから。

つまり、女性向けのオタク界に足を突っ込むと既にそこは「やおい」ジャンルが派生しているものだから、新たにオタク界に入る女はその影響でやおいを嗜好するようになる、という仮説。
でも、「大抵通る→だから人気になる。」という帰結が仮にあり得たとしても、だからって「本当はやおいが好きなんじゃなくて、単にそれしか嗜好するものが見当たらないゆえにやおいを一過性で嗜好するしかないのだ(←ここではこの仮説を『偽腐女子説』と呼称しよう)」とは言えないと思う。*5

なぜか?それは、今回の『偽腐女子説』では「今のように女オタク界でやおいが主流でなかったらやおい人気(つまり腐女子の存在)はなかっただろう」という結論が確認できないからだ!
「〜であるからAがある」というのは「では、〜でなければAはないのか」という問いに対応しなければ、論理的保障はないように思う。そのように対応させなければ、他の仮説はいくらでも成り立ってしまうことになる。つまりその仮説の正当性は問えない。私はそこらへんが引っかかるんですが・・・。*6
だってさ、たとえそこで「やおいの増大によってやおい以外のジャンルが不可視化されている」というオタク界の現状があったとしても、それは『非やおい同人誌』と『やおい同人誌』の対等な競合の結果かもしれないわけだし、必ずしも「今のやおい需要は偽腐女子の増大の結果」とは言えないことになる。それどころか逆に本当にやおいが好きな人が多いから女オタク界でやおいが主流なのかもしれない。それは『偽腐女子論』を否定する結果である。つまり、どちらとも言えない。

この『偽腐女子説』を成り立たせるためには腐女子を「今の腐女子」と「昔の腐女子」に二分した上で、その二つを「本物の腐女子(本当にやおい好き)」と「偽者の腐女子(本当は好きなわけではない)」で区分させる必要がある。つまり、「昔の腐女子=本物の腐女子が大」「今の腐女子=偽者の腐女子が大」という対立図式を生ませているわけ。けれど、実際にはその二つの層がはっきり分かれているという保証はなく、重複してる可能性も考えられるわけだ。今も昔も本当にやおいが好きな人もいるかもしれないし、いないかもしれない。それに、「本当に」とあえて書いたけど、それは本人にしか分からないことだ。あるいは本人にも分からないことだ。

んーとね、思うんだけどさ。需要があるという現象にはいくつかの原因があるだろうけれど、その原因の一つAはもう一つの原因Bを排除しないと思うんだ。そりゃあさ?オタク界でこんだけやおいが溢れてたら注目もされるだろうし、それが需要を生み出している可能性も考えられるが、だからって需要がある原因がそうした要因だけにあるとは言えない上に、その要因が他の要因を否定するわけじゃないでしょ。もしくはその要因と他の要因が合わさった結果として現代の「やおい人気(腐女子の存在)」が見られているという可能性さえあるじゃん。*7それも一つの要因だけど、なぜそこで「女オタク界でやおいが今ほどあふれてなかったらば、本当にやおいが好きな腐女子は存在しなかっただろう」みたいなことが言えるのか、全く理解できないんですが・・・。

つまりね?
たとえ、腐女子の中には“本当はやおいが好きなわけではない”「腐女子」がいたとしても、だからって、逆に“本当にやおいが好きな”「腐女子」がいないと言える根拠はどこにもないわけ。
論理学に詳しくないし、経済とかの理屈にも明るくないので上手く説明できませんが、たぶんこのエントリの論理は破綻していると思う。。。

そもそも、彼女の『偽腐女子説』は、先に挙げた「生々しいから」「女キャラに嫉妬するから」という非本質的な構築性のある原因論に依拠しているが*8、その原因論にだってなんの論理的保障もないのだから、そこから発展した『偽腐女子説』もまた論理的保証はないはず。*9
・・・もう力尽きたからとりあえず反論(つーか疑問)はこんなもんにしときます。





では、結論。
現代の腐女子にも本当にやおいが好きな人もいる、という可能性は『偽腐女子説』では否定できない。

どうでもいいかもだけど、こんだけ言いっ放しが出来る「腐女子論」の言説空間ってとってもフリーダムな感じで、本当流言飛語飛び交う状況ね・・・。


(最後に。これって実は同性愛と異性愛の構築性の議論でも応用できます。つまり、同性愛者と異性愛者の数は、構築性だけで説明することは不可能であるし、本質性だけでも不可能なんですよね。「腐女子」と「同性愛/異性愛」って本当にアナロジー

*1:本当に突っ込みどころ満載で、あえて無視しなければ話が進まない箇所が多いです。たとえば、仮説の重複がそれ。一つの仮説の正当性を議論するには、他の仮説は排除しなければならないはずなのにしていない。故に焦点をある程度限定して話を進めることにします。よろしく。

*2:http://anond.hatelabo.jp/20071028234626

*3:ちなみに私、元ネタのエントリの方は筆者の「女性差別嫌いな人や男女平等大好きな人は読まないように」という注意書きに素直に従ったので読んでません。つっても、それほど「男女平等」って言葉は好きじゃないんですが。

*4:つーか、実際に男女ものもいける腐女子はいるし、そういう存在がやおい人気を支えていたとしたら、この仮説はすぐさま否定される。けれどここでは論理に着目して反論してみた。(論理学詳しくねーけど)

*5:更に言うと、「腐女子」と「マンガ愛好家」の違いが良くわからないし、腐女子だって「マンガ愛好家」の側面を持つのだから彼女の理屈は破綻している。。。まあ、そこを突くと話が進まないから仮に問わないにしても(<いいのか?)、やはりおかしい。以下に述べる。↓

*6:まあ、「だってただなんとなく仮説を立ててみただけなんだもん」と言われればそれまでの話で、私が「それは仮説に過ぎない」と指摘しても無意味なんだけどさ。

*7:くどいようだが、もちろんそうではない可能性もある。

*8:でなければ「現代の女オタク界にやおいが人気である原因は、二つの<古典的原因>などではなく(!)、単に最初からやおいしかなかったからだ」という論理は出てきませんよね?

*9:他にも反論の余地はある。たとえば、やおい以外にもはまる物があっても、どうしてもやおいを読みたくなる人はいるし、一旦離れても出戻りする人もいるし。ってこれだけ言ったらこの仮説は簡単に否定できるんだけど、あえて論理性の限界、破綻を指摘しました。。。