心神喪失者等医療観察法と措置入院について長い前置き。

以前id:rocoroco3310さんとメールでやり取りをしてもらったことがありました。(その節はありがとうございました、rocorocoさん。本当に感謝しておりますが、しかし面倒に付き合わせてしまい、すいませんでした。平に平に・・・。)
その内容は、私が前に書いた5月26日のドラマ『眠れる森』に対する記述についてのもので。精神障害に関する貴重なご意見だったわけです。
それは心神喪失者等医療観察法*1についてのことでした。

rocorocoさんのコメントをここに。

この法案は、ようするに「また犯罪を犯すかもしれない」という「予期」をもとに、現在犯罪者でもなんでもない人間を強制的に入院させることが可能であるのですね。
そして、これは重大な人権侵害にあたる可能性があって、精神障碍者団体等から大きな反発を招いています。

http://d.hatena.ne.jp/nodada/comment?date=20070526#c

あと、芹沢一也氏のhttp://www.sbbit.jp/article/art.asp?newsid=1201も興味深いです。

で、(私は数字に極端に弱いのであまり詳しく述べませんが)精神障害者*2の犯罪率もそうですが、再犯率*3が高いかというと、事実はそうではない。ヒットしそうな語で検索を書ければすぐ出てきたのだが、精神障害 再犯率 - Google 検索再犯率は高くない、という主張がネット上でなされてある。つまり、再犯率が著しく高いから「予期」をして「治療」すべきだ、とは言えないわけです。


しかし、そういう事実があるから批判されるべきだ、と言いたいわけではありません。精神障害へのこのような姿勢は、「再犯率が低いからダメ」だという問題でもないと私は思います。

そもそも「予期」つまり犯罪の「おそれ」を予測するなどと言うことは至難である。また犯罪自体、状況的・関係的諸事情が複雑に絡まって起こるものなのだから、そのことを軽視して治療と称して保安処分(!)することは、安直に 精神障害者=犯罪者もしくは犯罪予備軍である、という偏見による差別的な処遇を許す事になる。
*4
簡単に言えば、犯罪行為自体とても複雑なプロセスがあるだろうから、安直にリスクグループを作って危険視はできない、ということかな。


それに、現在の措置入院*5自体問題はあって、人権的見地から言っても(院内での虐待等も含め)様々な問題はある模様。

精神科への強制的な入院ということ自体が問題を含む。心神喪失者等医療観察法措置入院自体が、その姿勢としていかに分けられるかは素人の私にはわからないが、「医療」と「司法」がごっちゃになりうる危険性が共通してあるのかもしれない。
さっきから引用が多いがとにかく引用。引用先まで全部読めとは言いませんが、えいや!

精神科のみに強制入院制度がある合理性はまったくない。本人の利益以外の目的があるからこそ強制入院制度が精神科にあるのだ。

そしてその目的とは社会防衛であり、治安であり、犯罪防止以外の何ものでもない。

http://nagano.dee.cc/0601seisiniryou.htm

じゃあ医療って何よ?

そもそも医療は強制されるものではなく、病を治し、病の苦しみを和らげて社会で生活できるようにするためのもの、入院は退院するためのものであるはずである。しかし、年単位の入院生活は、社会で生きる術を、居場所を、習慣を、意欲を奪い取っていく。ハンセン病と同じ「人生被害」が現在もなお、「医療」の名の下に精神病院で続いている。

http://www.kyotoben.or.jp/siritai/iinkai/news2.html

本当に当人の為になってるのかな?

「再び対象行為を行うおそれ」を要件としての期限の定めのない強制入院、3〜5年にわたる強制通院といった処遇制度を創設し、地方裁判所に設置する裁判官および精神保健審判員からなる合議体が裁判することとするもので、実体的にも手続き的にも、精神障害者の人権の見地から見過ごすことのできない重大な問題を含むものと言わざるをえない。
[・・・]
不確実な再犯予測を前提に精神障害者にのみ無期限の身柄拘束を許すこと自体、許容しがたい人権侵害をもたらすと言わざるをえない。

http://www.s-bengoshikai.com/ketsugi_seimei/seimei7.htm

・・・と、まあ検索すると色々出てくるわけです(あ、でもほとんどrocorocoさんに教えてもらったものばかりです。よいページをご提供してもらいました^^)。

では、続きは28日の日記で。

*1:心神喪失者等医療観察法案」は、「心神喪失者の行為はこれを罰せず」そして「心神耗弱者の行為はその刑を軽減す」(刑法39条)に基づいて不起訴となった者、無罪となった者、あるいは刑を軽減された者に対する保安処分(特に治療処分)を意図している。by・http://nagano.dee.cc/syari.htm

*2:本題とすれるけど、「障害」という字を「障碍」と書くのは、自分的にはどうなんだろう。私自身はある語が否定的に見られるからと言って、他に言い方を変えるのは直感的に危険な気がしてしまう。←私は変態志向ですんで。安易に「障碍」という字を使わないほうがいのかもしれない・・・。ただ、ここの読者様が「障害」と書き表されたら不快と思う場合はどうしよう・・・。過敏になりすぎるのもあまりよくないから、とりあえずこれからは障害と記述します。

*3:今回、この法案に限って言えば、いわゆる「触法精神障害者」(て嫌な言い方ね!)への対策なので、「再犯」率が問題になるわけですね。

*4:再びhttp://nagano.dee.cc/syari.htm。「そもそも「精神障害→重大な他害行為」という図式が成立しうるという前提には無理がある。「精神障害者」であれ「非精神障害者」あれ、当該の者が心身共に苦しんでいた状態があったとして、そのことを直線的、短絡的に「重大な他害行為」に結びつけることは危険である。そこには、状況的・関係的諸事情がいろいろに絡まっているはずであり、個々の「重大な他害行為」は、そのような諸事情にこそ深くつながっていると想定することが大切である。」

*5:これは犯罪をした者に限らない。